※平行ニコルの顕微鏡写真:全て偏光の振動方向は画像の左右方向(⇔)
頑火輝石 enstatite(orthopyroxene) (Mg, Fe)SiO3 [戻る]
※斜方晶系の輝石は斜方輝石と呼ばれ,この頑火輝石が代表的なものである。原子配列は単斜輝石の単位格子を(1
0 0)に接触させた双晶構造である。
※原子比でMg>Feである。Mg<Feのものはフェロシライトで,やや高圧条件ででき,産出は少なく,閃緑岩やグラニュライトに時に見られる。なお,Mgをほとんど含まないFeSiO3は超高圧条件で安定で,通常の岩石には見られない。
斜方晶系 二軸性(+,−),2Vz=約30°〜2Vx=約50° Mg⇔Feの置換による組成変化による。
α=1.650〜1.710 β=1.653〜1.712 γ=1.660〜1.724 γ-α=0.010〜0.015 屈折率や干渉色はFeに富むものは高い。
形態/火山岩中では小柱状・短柱状,深成岩中では他形。
色・多色性/Feに乏しいものは無色で多色性なし。Feが多くなると淡緑⇔淡紅色の多色性(X´=淡紅色,Z´=淡緑色)が認められる(紫蘇輝石と呼ばれることがある)。 |
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へき開/2方向(C軸方向)に明瞭。C軸方向からはほぼ90°に交わる格子状に見える。C軸に直角の方向からは1方向しかないように見える。 | |
消光角/C軸に直角の方向から見た,1方向しかないように見えるへき開線に対し,直消光。 |
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伸長/正(あまり伸びていない結晶が多く,へき開線の方向に対して伸長を決める場合が多い) |
双晶/なし
累帯構造/火山岩中のものは時にMg⇔Feなどの置換による累帯構造があり,Feの多い部分は明瞭な緑・赤味を帯び干渉色は1次の黄色程度で,Mgの多い部分は無色で干渉色は1次の淡黄程度。
産状 この鉱物の産出はNa・Caの欠乏条件を示し,アルカリ岩には基本的に含まれない。 中性〜超苦鉄質火成岩,時にケイ長質火山岩である流紋岩にも含まれる。大陸地域の層状貫入岩体のはんれい岩の有色鉱物としては特に多く含まれ,このものは少量含まれるカルシウム分が普通輝石の細い離溶ラメラとして分離していることがある((1 0 0)方向)。かんらん岩中のものはFeにやや乏しい。 なお,アルカリ玄武岩マグマがマントルのかんらん岩の頑火輝石の分離結晶を取り込んだ場合,その結晶周囲にはアルカリ岩の石基メルトのNa・Caとの反応で普通輝石の反応縁が生成する。 変成岩ではグラニュライトによく含まれ,斜長石(ややCaに富む)・アルマンディン・きん青石などと共生する。また,蛇紋岩が接触変成作用を受けると,粗大な結晶や針状集合体で生じることがあり,このものは極めてFeに乏しい。 ※原子比でMg<Feのものはフェロシライトで,やや高圧条件ででき,産出は少なく,閃緑岩やグラニュライトに時に見られる。なお,Mgをほとんど含まないFeSiO3は超高圧条件で安定で,通常の岩石には見られない。 |
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平行ニコル |
クロスニコル |
安山岩中の頑火輝石(En) 玄武岩中の頑火輝石よりもややFeに富むので,淡緑⇔淡赤色の多色性が明瞭に見られる。クロスニコルでは干渉色は普通輝石よりも低く,1次の黄色程度。一見似た普通輝石とは,淡緑⇔淡赤色の多色性が認められることが多く,常に直消光し,双晶がなく,干渉色が低い点で区別できる。 |
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安山岩中の累帯構造がある頑火輝石(En) Pl:斜長石 安山岩中の頑火輝石の斑晶は,中心がFeに乏しく,周囲がややFeに富む累帯構造をなす場合がある。中心のFeに乏しい部分は干渉色が低く1次の淡黄色だが,周囲のFeに富む部分はやや干渉色が高く明瞭な黄色。なお,周囲のFeに富む部分は平行ニコルでもやや赤味や緑色を帯び,明瞭な多色性がある。 |
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かんらん石の周りにできた頑火輝石の反応縁(安山岩中) Opx:頑火輝石,Ol:かんらん石,Pl:斜長石 安山岩中のかんらん石((Mg,Fe)2SiO4)はしばしば頑火輝石((Mg,Fe)SiO3)の反応縁(Opx1)に取り巻かれ,これはマグマの固結過程でケイ酸分(SiO2)に富むマグマが混合し,(Mg,Fe)2SiO4+SiO2→2(Mg,Fe)SiO3の反応でできた反応縁である。Opx2は反応縁ではない頑火輝石である。 |
はんれい岩中の頑火輝石 Opx:頑火輝石,Pl:斜長石 頑火輝石は大陸地域の層状貫入岩体に特に多く含まれ,そのはんれい岩の主要構成鉱物になっている。それはややFeに富むので,この平行ニコルの画像のように淡緑・淡赤色の多色性が結晶方位の違いで明瞭に見られる。なお,斜長石はかなり灰長石成分に富み,このクロスニコルの画像のようにアルバイト双晶とともに,それに直交するペリクリン双晶が多く見られる。 |
クロスニコル はんれい岩中の頑火輝石 上画像の中央のように,深成岩中の頑火輝石中には,少量含まれていたカルシウム分が徐冷によって単斜輝石の離溶ラメラとして(1 0 0)に平行に析出していることがある(左のクロスニコルの画像中央の縦の輝線が単斜輝石の離溶ラメラ)。その単斜輝石の離溶ラメラは約40°の回転で消光し,かつ,母相の頑火輝石は対角位となり,灰色の干渉色を示している。なお,視野の周囲の青や紫の干渉色を示す粒状のものはかんらん石。 |
かんらん岩中の頑火輝石 Opx:頑火輝石,Ol:かんらん石,Cr-Sp:クロムスピネル 通常のかんらん岩にはかんらん石,クロムスピネル,透輝石,頑火輝石が多く見られ,頑火輝石はFeにやや乏しく,無色で多色性は示さない。これは造山帯のかんらん岩でかんらん石は圧砕されているが,頑火輝石は圧砕されずに大粒で残留している。 |
隕石(コンドライト)中の頑火輝石(中央の半円形に破壊されたコンドリュールの構成物) 頑火輝石はコンドライト中ではコンドリュールを放射針状の集合体で構成していることがある。クリノエンスタタイト(干渉色は似ている)とは異なり,上画像のように直消光する。 |